川上哲治さんのご逝去の報に接して、どれほど大きな悲しみを感じたことでしょう。
３年前の夏、蓼科にて一緒にお食事をさせていただき、いろいろと思い出話をさせていただいたのが、最後の出会いとなってしまいました。
川上さんは、昭和１３年から４９年まで、選手、コーチ、監督として、常に日本プロ野球界の先頭に立って戦ってこられました。
終戦の翌年からいち早く始まったプロ野球は、どれだけ多くの国民に明るい話題を提供し、選手たちのプレーにファンは酔いしれたことでしょうか。
赤バットの川上、青バットの大下、両者が競い合い、野球人気を盛り上げ、スーパースターとなられました。
昭和３１年には、日本プロ野球で初めての２０００安打を達成し、５度の首位打者を獲得し、「球が止まって見えた」というあの名言は、伝説となり、今もって語り継がれております。
川上さんは昭和３３年に引退されましたが、その後に私が入れ替わりで入団させていただきました。
遠征に出かける巨人軍を見送りに、東京駅に行き、川上さんと、長嶋さんと初めて会って、ごあいさつをさせていただきました。
昭和３６年から監督として、チームを率いていただきましたが、なんといってもその年の南海ホークスとの日本シリーズのときに、土砂降りの雨の中、多摩川グラウンドの芝生の上から、バッティングをしたことを強烈な印象としてこの胸に残っております。
その執念が実り、日本一となることができましたが、誰もが川上さんの指導者としての、勝利への思いの強さを感じさせられました。その後も断固たる決意を持って、チームを牽引（けんいん）していただきました。
チームプレーの徹底。それまでの野球と違って守備に力を入れ、チームプレーをたたき込まれました。
監督として１４年、その間１１回、日本シリーズに勝利しました。
特に４０年から４８年までの９連覇は、川上監督でなければなし得なかったといい切れます。
プロ野球界に燦然（さんぜん）と輝く、川上さんの勝利に対する執念の結晶だといえます。
おかげをもちまして、われわれＶ９選手も胸を張って生きてくることができました。
いま、笑顔の川上さんの写真を前にして、いかに川上さんが偉大な存在であったか、改めて知らされております。
プロ野球界は、これからも力強く前進してまいります。どうぞ、見守っていてください。
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2013年12月2日 東京ドームホテルにて「お別れの会」
